ホンネ業:「好きな音楽を副業にして、在宅で稼げたら……」。そんな憧れを抱く人は多いですが、現実は甘くありません。クラウドソーシングでの低単価な案件獲得や、再生数が伸びないYouTubeなど、音楽で「納得のいく収益」を上げるのは至難の業です。しかし、そんな中で「ライブ配信」という道を選び、会社員を続けながら最高月収40万円を達成した女性がいます。今回は、IT企業で人事労務として働きながら、5年間にわたりマイクの前で歌い続けてきた植田さんに、音楽副業の「泥臭すぎるリアル」を語っていただきました。

【インタビュー回答者プロフィール:植田さん】

  • 年齢・性別:30代・女性
  • 本業:IT系企業(人事労務職)
  • 副業内容:ライブ配信(Pococha中心)
  • 活動期間:5年
  • 最高実績:最高月収40万円、月120時間配信の経験あり
  • 保有スキル:合唱(6年)、アカペラ(6年)、宅録環境完備(コンデンサーマイク、IF所持)

音楽副業の初心者が直面する「在宅・未経験」の甘くない現実

【アプリの闇】「歌が上手ければ稼げる」という勘違いを打ち砕かれた日

ホンネ業:植田さんは中学・高校・大学と合計12年も合唱やアカペラを経験されていますよね。正直、「歌には自信があるし、ライブ配信でもすぐに通用するはずだ」という期待はありましたか?

植田:正直に言うと、ありましたね(笑)。「人よりは歌えるし、機材も揃っているから、聴いてもらえればファンはつくはずだ」と思っていました。でも、その自信はすぐに打ち砕かれました。トップランクで活躍しているライバーさんの配信を覗きに行ったとき、驚愕したんです。失礼ながら、歌の技術だけで言えば私の方が上かもしれない……と思うような方でも、画面上では高額アイテムが飛び交い、熱狂的な応援を受けていたんです。

ホンネ業:歌のうまさと、収益が比例していない現場を目の当たりにしたんですね。

植田:はい。ライブ配信は「歌を聴く場所」である以上に「その人を応援する場所」なんだと痛感しました。歌が上手い人は他にもいくらでもいる。その中でなぜ「この人」にお金(アイテム)を払うのか。その理由が、技術以外の部分にあると気づいた時が、最初の大きな挫折でしたね。

Pococha(ポコチャ)のランク制が強いる「時給300円」からの長い下積み

ホンネ業:ライブ配信というと「一攫千金」のイメージを持つ初心者が多いですが、実際の収益化までのスピード感はどうでしたか?

植田:私が使っていたPococha(ポコチャ)は、ランクによって時給が出る仕組みですが、最初は本当に微々たるものです。配信を始めて半年くらいは、時給換算すると300円程度。コンビニのバイトにも遠く及ばない金額で毎日数時間、カメラの前で歌い、喋り続けるんです。最初の1円を稼ぐのは簡単かもしれませんが、副業として成立するレベルまで「ランクを維持し続ける」努力は、世間の「楽に稼げる」イメージとは180度違います。時給3000円に届くまでに、私は2年の歳月を費やしました。

歌いたい曲より「40〜50代が求める曲」を覚える徹底的なリスナー目線

ホンネ業:ご自身の好きな曲を歌うスタイルから、途中で変えられたそうですね。

植田:最初は自分の好きなアーティストの曲ばかり歌っていましたが、それでは「自己満足」で終わってしまいます。アプリで課金してくれるメイン層は、30代から50代のサラリーマンの方々。彼らが懐かしいと感じる曲や、彼らのオススメを必死に覚えるようにしました。これが音楽副業における「市場調査」なんだと思います。「自分の歌いたい曲を聴け」ではなく「あなたが聴きたい曲を私が歌う」というスタンスに変えてから、リスナーさんとの絆がぐっと深まりました。

機材を揃えても解決できない「応援したい人」になれるかという壁

ホンネ業:コンデンサーマイクやオーディオインターフェースなど、環境はプロ顔負けですが、機材があれば勝てるというわけではないのでしょうか?

植田:機材はあくまで「入り口」を整えるための礼儀のようなものです。音が綺麗なのは当たり前。でも、最後は「人間性」の勝負になります。どんなに良いマイクを使っても、リスナーさんのコメントへの反応が冷たかったり、感謝を伝えられなかったりすれば、二度と来てもらえません。「応援したい人」になるための努力……例えば、一人ひとりの好みを覚えたり、リアクションを工夫したりといった泥臭い部分は、機材では絶対に解決できない課題でした。

【歌×副業】「声の仕事」に憧れる人が最初に見落とすコミュニケーションの重要性

ホンネ業:「声だけで稼ぐ」という言葉の響きに惹かれる人は、喋りが苦手なケースも多いですが、いかがでしょうか。

植田:それはかなり厳しい現実が待っていると思います(笑)。ライブ配信の歌枠は、歌っている時間と同じくらい、あるいはそれ以上に「雑談」の時間が重要なんです。歌い終わった後の数分間のやり取りで、どれだけ相手の心に踏み込めるか。ただ歌うだけのマシーンになってしまうと、ファンは定着しません。「声の仕事」の本質は、声を通じた「心の交流」だと気づけないと、音楽副業で収益を上げ続けるのは難しいと感じます。

煽りや雑談が苦手な私が選んだ「リクエスト制歌枠」という生存戦略

ホンネ業:配信の世界には、アイテムを煽ったり過激なことをしたりして稼ぐ人もいますが、植田さんはあえて別の道を選んだのですね。

植田:はい、私は「煽って投げてもらう」スタイルがどうしても自分に合わなかったんです。だからこそ「リクエスト制の歌枠」という形に特化しました。リスナーさんがリクエストしてくれた曲を真剣に覚え、丁寧に歌い上げる。この「誠実さ」を売りにすることで、煽らなくても安心して通ってもらえる空間を作りました。派手さはありませんが、結果としてそれが月40万円という数字、そして5年という長期活動に繋がったんだと確信しています。


月収40万の代償と、音楽副業で長く生き残るための「休む技術」

睡眠を削る24時の壁。本業(人事労務)と配信を両立させた泥臭いスケジュール

ホンネ業:最高月収40万円を達成された際、スケジュールはかなり過酷だったと伺いました。具体的にどのような生活を送っていたのでしょうか?

植田:正直、当時は常に眠気との戦いでしたね。平日は朝7時に起床してフルタイムで人事労務の仕事をし、帰宅後の20時半から深夜24時まで配信。Pocochaは毎日24時にその日のランク(応援ポイントの集計)が決まるので、その瞬間に配信をつけて盛り上げている必要があるんです。1時過ぎに就寝してまた翌朝仕事……というサイクルに加え、空き時間には新しい曲を覚える作業。生活のすべてが「配信」を中心に回っていました。

ホンネ業:まさに「泥臭い努力」の結晶ですね。華やかな数字の裏には、文字通り身を削る時間があったということですね。

朝はオフィスのデスクで働き、夜は帰宅後にマイクの前で配信をし、深夜1時過ぎに眠る過酷なスケジュールをこなす女性ライバーのイラスト。

【初心者必見】月120時間配信の果てに見つけた、プライベート崩壊の予兆

ホンネ業:月に120時間もの配信を続けていた時期、精神的・肉体的な限界を感じた決定的な瞬間はありましたか?

植田:一番は、家族との時間の喪失です。結婚しているのですが、以前は仕事から帰宅した後に夫婦でゆっくり食事をしたりゲームを楽しんだりする時間がありました。それが配信を優先するあまり、一切なくなってしまった。関係が悪化したわけではありませんが、ふと「自分は何のためにここまで削っているんだろう?」と虚しさを感じたんです。本業でも集中力が落ちる場面があり、これが「音楽副業」の限界点なのだと確信しました。

スマホとマイクを置く勇気。週2日の「完全休日」が収益を安定させる理由

ホンネ業:過去の自分に「休む時はしっかり休む!」と伝えたいとのことですが、具体的にはどう休むべきだったと考えていますか?

植田:週に2日は、完全にスマホとマイクから離れる日を作るべきでした。実は、休むことは「サボり」ではなく、配信の「質」を高める投資なんです。ずっと配信ばかりしていると、話のネタが枯渇してリスナーさんも飽きてしまいます。外に出て流行のものに触れたり、テレビを観たり、何気ない日常を過ごすことで、雑談の幅が広がり、結果としてリスナーさんの定着率が上がる。プライベートが充実している人の方が、画面越しにも魅力的に映るんですよね。

会社員だからこそ武器になる、リスナー(サラリーマン層)との共通言語

ホンネ業:本業がIT企業の人事労務であることは、配信活動にどのような影響を与えましたか?

植田:「一般常識がある」という点が、意外にも強い武器になりました。アプリに課金して応援してくれるメイン層は30〜50代の働く男性です。私自身がフルタイムで働いているからこそ、彼らの仕事の悩みや日常の苦労に深く共感できる。「この人は自分の話を分かってくれる」という安心感が、リピートに繋がったと感じています。世間知らずな「おバカキャラ」のライバーが多い中で、落ち着いた大人の会話ができることは、音楽副業における大きな差別化要因でした。

人事労務の仕事をする女性ライバーの社会人経験が、配信中のスマホ画面を通じて、仕事に疲れた男性リスナーたちへの共感となり、彼らが安心している様子を描いたイラスト

【在宅】での練習時間が生んだ「リスナーを大切にする」という最強の差別化

ホンネ業:「リクエスト曲を覚える」という作業は、在宅環境だからこそ徹底できたのでしょうか?

植田:そうですね。自宅にコンデンサーマイクなどの録音環境が整っていたので、配信外の時間にリクエスト曲を練習し、クオリティを高めることができました。リスナーさんからすれば、「自分がおすすめした曲を、次の配信までに覚えて歌ってくれた」という事実は、最高級のプレゼントになります。「あなたのことを大切に思っていますよ」というメッセージを、歌を通じて届ける。この積み重ねが、月40万という数字を支える強固なファンベースを作ってくれました。

最高月収40万を達成してわかった、自己投資とメンタルケアの相関関係

ホンネ業:5年という長い期間、モチベーションを維持できた秘訣を教えてください。

植田:稼いだお金を、さらに良い音を届けるための機材や、自分自身の心身を整えるための時間に投資したことです。現在はMIX(音響編集)の勉強も始めていますが、常に「より良いもの」を目指す姿勢がメンタルをポジティブに保ってくれました。音楽を副業にするなら、目先の収益だけでなく、自分のスキルが向上している実感を得ることが、長く楽しく続けるための唯一の道だと思います。


まとめ:音楽副業を一生の「好きなこと」にするための唯一の正解

ホンネ業:今回、植田さんのインタビューを通じて見えてきたのは、音楽副業の本質は「技術」ではなく「誠実なコミュニケーション」であるという事実です。歌が上手いだけで稼げるほど甘い世界ではありませんが、リスナーの心に寄り添い、時には勇気を持って「休む」選択をすることで、月40万円という景色にたどり着くことは可能です。これから「声」を武器に副業を始めたいと考えている方は、最新の機材を揃える以上に、目の前の一人を大切にする覚悟があるかを、自分に問いかけてみてください。