ホンネ業:「今の仕事、一生続けていて大丈夫なのかな……」そんな不安を抱えながら、毎日流れてくる伝票やメールを淡々と処理している営業事務の方は少なくありません。ネットで検索すれば『営業事務はキャリアにならない』『AIに代替される』といったネガティブな言葉ばかりが並びます。しかし、本当にそうでしょうか?

ホンネ業:今回お話を伺った田口さんは、9年間の事務キャリアの中で「自動化(VBA/GAS)」という武器を手に入れ、さらにそのスキルを「副業」へと転換することで、組織に依存しない市場価値を自ら構築されました。本業を辞めずに、今の環境を最大活用してキャリアを「再定義」する。そんな30代からの逆転戦略を紐解きます。


田口さんのプロフィール

  • 年代:30代
  • 本業:営業事務・一般事務(計9年)
  • 専門スキル:Excel VBA / Google Apps Script (GAS) / 資料作成
  • 副業実績:事務代行、アプリ開発・運営、バナー制作(経験1年)
  • 主な成果:社内での自動化ツール導入による昇給、副業での自力収益化

営業事務が「キャリアにならない」と絶望する30代へ。私が9年間のルーチンを脱出した思考法

ホンネ業:まず最初に、多くの営業事務が抱える「モヤモヤ」の正体について触れていきたいと思います。田口さんも、かつてはその一人だったのでしょうか?

決まった作業を正確にこなすだけでは、心が死んでいく理由

ホンネ業:事務職の美徳は「正確さ」と「スピード」だと言われますが、裏を返せば「言われたことをそのままやる」ことが求められますよね。そこに物足りなさは感じませんでしたか?

田口さん:すごく感じていました。私はもともと、工夫したりアイデアを出したりするのが好きなタイプなんです。でも、事務の世界はいかに「決められた枠組み」から外れずに、ミスなく処理するかが正義。クリエイティブな要素が少なく、自分が何かを構築している感覚が持てなかったんです。「このまま10年経っても、私は伝票を打つのが早くなるだけなのかな」という恐怖は常にありましたね。

30代からの「焦り」は心理的ブレーキを壊す最強の武器になる

ホンネ業:30代で新しいこと(副業やスキル習得)を始める際、普通なら「今さら遅いかも」とブレーキがかかりがちですが、田口さんの場合はどうでしたか?

田口さん:私の場合は逆でした。むしろ「早く始めなきゃ!」という焦りの方が強くて、ブレーキを感じている余裕がなかったんです。30代って、今後のキャリアの方向性が固まってしまう時期じゃないですか。今の会社は環境も良くて、人間関係にも恵まれている。だからこそ、ここに甘んじて「外で通用しない自分」になるのが一番怖かったんです。その危機感が、ランサーズでの副業の仕事探しに一歩踏み出す背中を押してくれました。

キャリアチェンジは転職だけじゃない。今の椅子に座ったまま自分を「アレンジ」する方法

ホンネ業:世の中のメディアは「キャリアアップ=転職」と煽りがちですが、田口さんはあえて「副業」を選ばれましたね。

田口さん:そうですね。現職の就業条件が良かったので、リスクを冒してまで転職を急ぐ必要がなかったんです。でも、今の事務スキルの延長線上だけで生きていくのは不安。だから「副業」という形で、コーディングやデザインといった異なる実務経験を積む道を選びました。今の環境を守りながら、外の世界で通用する自分を「アレンジ」していく。これこそが、30代の事務職にとって最も現実的で、賢いキャリアチェンジの形だと思っています。

会社の副業規定はどうした?私が「専用口座」を作って一歩踏み出した覚悟

ホンネ業:副業を始めるとなると、会社の規定などが気になって足踏みする人も多いです。具体的にどう準備されましたか?

田口さん:幸い私の会社は、上司に相談して許可を得れば副業が可能でした。ただ、一番の敵は「自分の継続力」だと思ったので、モチベーションを維持するために「副業専用の口座」を真っ先に作りました。本業の給料と分けることで、たとえ数百円でも「自分のスキルで稼いだ証」が通帳に刻まれる。それが目に見える形になることが、三日坊主を防ぐ一番の対策になりましたね。

副業専用の通帳を大切そうに抱え、小さな成果を喜ぶ女性のイラスト

ただの雑用が「自動化のネタ」に見える。自力で稼いで起きた脳内の変化

ホンネ業:自力で稼ぐ経験をすると、本業の見え方も変わると言われます。田口さんの場合、事務作業への向き合い方はどう変わりましたか?

田口さん:劇的に変わりました。以前は「今日中に終わらせなきゃ」と、目の前の作業を全力でこなすことに必死でした。でも副業を始めてからは、「いかにスキマ時間を作るか」を考えるようになったんです。副業に充てる時間や、新しいスキルを学ぶ時間を捻出するために、今の作業をどうすれば短縮できるか。それまでは「ただの面倒な雑用」だったものが、すべて「VBAやGASで自動化できる絶好のネタ」に見えるようになったんです。

スキルは「実務の不便」から生まれる。ログを出力しエラーを潰した改善オタクの意地

ホンネ業:今の田口さんがあるのは、その「不便」を放置しなかったからですね。VBAやGASを習得する際、特に苦労したことは何ですか?

田口さん:当時は今ほどAIが普及していなかったので、エラーが出ると自力で解決するしかありませんでした。数日間ずっと悩み続けることもザラで(笑)。でも、ログを出力して「どこで止まっているのか」を一つずつ突き止めていく作業は、もともと嫌いじゃなかったんです。Web上の記事と自分のコードを何度も見比べて、パズルを解くようにエラーを潰していく。実務に直結する課題があったからこそ、挫折せずに習得できたんだと思います。

営業事務を「稼げるキャリア」へ変える具体策。低単価の失敗から学んだスキルと戦略

ホンネ業:前半では、事務作業を「自動化のネタ」と捉えるマインドの変化について伺いました。後半では、いよいよそのスキルを武器に「外貨」を稼ぎ、社内評価を勝ち取った具体的なプロセスに切り込みます。順風満帆に見える田口さんですが、実は手痛い失敗も経験されているんですよね?

【失敗談】時給換算で絶望。2週間かけて15,000円の企業リスト作成で得た教訓

ホンネ業:副業初期に、かなりハードな案件を経験されたとか。具体的にどのような内容だったのでしょうか。

田口さん:はい、条件に合う企業のリストを作成する案件でした。単純作業に近いのですが、件数が膨大で……。結局、本業の合間を縫って2週間ほど拘束されました。それで手元に残った金額は、わずか15,000円ほど。時給に換算するのが恐ろしくなるような結果でした。

ホンネ業:2週間も神経を削って15,000円。納品ボタンを押した瞬間の、あの独特な感情について詳しく教えてください。

田口さん:達成感なんて、1ミリもありませんでした(笑)。あったのは、凄まじい疲労感と「なぜ受ける前にちゃんと計算しなかったのか」という自分への怒りです。副業は「稼ぐ」ために始めたはずなのに、自分の時間を安売りして、心身を削ってしまった。あの時の後悔は、今でも鮮明に覚えていますね。

案件受注前にコストパフォーマンスをよく考えてから受注すべし

ホンネ業:その苦い経験から、過去の自分、あるいはこれから副業を始める人にアドバイスするとしたら?

田口さん:「案件受注前にコストパフォーマンスを徹底的にシミュレーションせよ」と言いたいです。特に事務系の案件は、一見簡単そうに見えても、イレギュラー対応で工数が跳ね上がることがあります。自分のスキルでその作業に何時間かかるのか、時給に見合うのか。それを冷静に判断できるようになることが、単なる「作業員」から脱却する第一歩だと思います。

魔法使いのように重宝される快感。自動化を実践して「昇給」を勝ち取った話

ホンネ業:一方で、本業ではVBA/GASのスキルが大きな成果を上げましたね。周囲の反応はどう変わりましたか?

田口さん:最初は自分のために始めた自動化でしたが、次第に「これ、他の人の分も自動化できるな」と思って展開していったんです。そうしたら、周りから「魔法使いみたい!」「こんなことまでできるの?」と驚かれ、感謝されるようになりました。今では、部署内で何か効率化したいことがあると、真っ先に私に相談が来る。頼りにされることで実績も積めますし、実際に昇給という形で評価もいただけました。事務職でも、自分の「専門性」を確立すれば、代えの利かない存在になれるんです。

オフィスで魔法のように自動化ツールを使い、同僚たちから感謝される事務職の女性のイラスト

まじめに従うのはやめなさい。自分を楽にする工夫が、結果として会社を救う

ホンネ業:「事務職は言われた通りにやるもの」という思い込みが、実はキャリアの壁を作っているのかもしれませんね。

田口さん:本当にそう思います。まじめに手順通りやるだけが正解ではありません。いかに効率化し、ミスのリスクを減らし、自分を楽にできるかを常に考える。それが結果的に、部署全体の利益や会社の利益に直結します。自分を「楽」にする努力は、決して手抜きではなく、高度なスキルアップなんです。その姿勢こそが、事務職の市場価値を最も高めてくれると感じています。

キャリアについても収入を増やしたりスキルをつけたりするのは「転職」だけが選択肢ではない

ホンネ業:「営業事務はキャリアにならない」と悩む人へ、田口さんが一番伝えたいメッセージは何でしょうか。

田口さん:キャリアを好転させる方法は、転職だけではありません。今の環境で「何ができるか」を考え、自分の手で今の職種をアレンジしてもいい時代です。私は「事務×IT(自動化)×副業」という形を選びましたが、正解は一つじゃない。自分にとって心地よいバランスでスキルを足していけば、事務職の可能性はいくらでも広がります。


まとめ:営業事務が「キャリアにならない」という呪縛を解き、自分をアップデートする方法

ホンネ業:今回のインタビューを通じて見えてきたのは、営業事務という職種がキャリアにならないのではなく、「既存の枠組みの中で、言われたことだけをこなす姿勢」がキャリアを停滞させているという事実です。田口さんのように、日々の不便を「自動化」というスキルで解決し、その実績を「副業」や「社内評価」に繋げることで、事務職は非常に強い武器になります。

  • 30代の焦りを「変化のガソリン」に変える
  • 本業を「スキマ時間を作るための実験場」と定義する
  • 転職にこだわらず、副業で「実務経験」を横展開する
  • 「自分を楽にする工夫」を専門スキルとして昇華させる

ホンネ業:もしあなたが今、「私の仕事には価値がない」と感じているなら、まずは目の前の単純作業を5分短縮するコードを書いてみてください。その5分の積み重ねが、組織の外でも通用する「あなただけのキャリア」を創り出すはずです。