ホンネ業:「介護職、もう無理」――検索窓にこの言葉を打ち込む時、あなたの心はすでに悲鳴を上げているはずです。人手不足、低賃金、そして何より「自分の善意が削られていく感覚」。今回お話を伺った村岡さんも、かつてはその一人でした。保健師・看護師という立派な資格を持ちながらも、現場の理不尽に押しつぶされそうになっていた彼女。しかし、彼女が選んだ「出口」は、単なる転職ではありませんでした。彼女を救ったのは、夜勤明けの朦朧とした頭で掴み取った、たった数千円の「副業報酬」だったのです。この記事では、現場のドロドロとした現実と、そこから抜け出すための小さくも力強い一歩を、村岡さんのホンネと共に紐解きます。


  • 回答者:村岡さん(20代後半・女性)
  • 保有資格:保健師、看護師、介護職員実務者研修
  • 本業:介護職(約3年勤務)
  • 副業:Webライティング
  • 稼働時間:週10〜15時間(夜勤明け、休日)
  • 挫折経験:新卒で入職した病院を3ヶ月で退職。現在の介護現場でも16時間連続夜勤による過労を経験。

介護職でもう無理だと感じた瞬間。16時間夜勤と「上司の言葉」に絶望したあの日。

ホンネ業:まずは、村岡さんが「本当に限界だ」と感じた当時の状況からお聞きします。介護現場の過酷さは耳にしますが、具体的にどのような環境だったのでしょうか。

コロナ禍の現場で突きつけられた「シフトの迷惑」という刃

村岡さん:一番しんどかったのは、前職場で連続16時間の夜勤をこなし、そのまま日勤や早出・遅出が休みなく続く「通し勤務」が当たり前になっていた時期です。足は常にパンパンで、帰宅しても身体が興奮状態で眠れない。そんなボロボロの時に、コロナにかかってしまったんです。ガイドラインでは5日間は休まなければいけなかったのですが、職場からは「早めに出てこい」と。私が無理をして出勤して、利用者さんにうつしてしまったら責任が取れないと伝えたら、上司にこう言われたんです。
「シフトで迷惑かけてるのに何を言ってるの?」と。
あの瞬間、この職場には私の居場所も、私の正義も、もうどこにもないんだと絶望しました。

「体調管理もできない自分が悪い」自責のループに陥る介護職の心理

ホンネ業:上司のその言葉は、あまりに無慈悲ですね。自分を大切にする権利すら奪われたような感覚でしょうか。

村岡さん:本当にそうです。でも、一番辛かったのは、そう言われて「職場が悪い」と即座に思えなかったことなんです。心の中では『体調管理もできない自分が悪いんだ』『みんなも頑張っているのに、自分だけしんどいなんて甘えなんじゃないか』と、自分を責める言葉ばかりが浮かんでいました。介護職の人って、真面目で優しい人が多いからこそ、限界を超えていても「自分が未熟だからだ」と自分に刃を向けてしまう。あの自責のループに入ると、本当に出口が見えなくなります。

看護師・保健師の資格があるのに……「もったいない」という言葉の呪縛

ホンネ業:村岡さんは看護師や保健師といった、社会的にも権威のある資格をお持ちですよね。介護現場で働いていると、周囲からの目線に悩むこともあったのでは?

村岡さん:何度も言われました。「なんで看護師として就職しなかったの?もったいない」って。悪気はないんでしょうけど、その言葉が一番刺さるんです。自分でも「何のためにあんなに勉強したんだろう」と悔しさが込み上げてきて。でも、資格があるからこそ『資格を持っているのに、現場でこんなに疲弊して何もできない自分』が惨めで仕方がありませんでした。専門職としてのプライドがある分、現状とのギャップに苦しめられていたんだと思います。

新卒3ヶ月で退職した過去。「何のために勉強したのか」と自問自答する日々

村岡さん:実は私、新卒で入った病院をわずか3ヶ月で辞めているんです。当時は「こんなこともできないのか」と毎日自分を否定していました。介護の道を選んだのも、どこかで「看護師として通用しなかった自分」へのコンプレックスがあったからかもしれません。でも、介護現場でも結局、体力と精神をすり減らす日々。資格という武器を持っているはずなのに、それを使う場所さえ間違えているんじゃないか、自分の人生はずっと中途半端なんじゃないかと、夜勤明けの暗い部屋で何度も自問自答していました。

現場の善意だけで回る仕組みへの限界。飲み込んだ「制度への違和感」

ホンネ業:資格があるからこそ、現場の「やり方」の非効率さや、矛盾に気づいてしまうこともあったのではないですか?

村岡さん:ありましたね。本来、私たちが働く場所は「その人らしい生活」を支える場所であるはずです。でも現実は、オムツ交換や記録、感染症対応の波に飲まれ、一番大切なはずのレクリエーションや利用者さんとの対話が後回しにされる。制度上の人員配置は満たしていても、現場には1ミリの余裕もないんです。上司に言っても「今は忙しいから」で終わり。結局、現場のスタッフの『善意』だけで無理やり回しているんです。でも、その善意だって無限じゃない。いつか全員が燃え尽きてしまうという恐怖を、ずっと飲み込んでいました。

本当は誰もが「自分らしい生活」を支えたいのに、余裕がない現実

ホンネ業:ケアプランには立派なことが書いてあっても、現実は作業をこなすだけで精一杯。その乖離が、介護職の心を削る一番の原因かもしれませんね。

村岡さん:そうなんです。利用者さん一人ひとりに寄り添いたいと思ってこの仕事に就いたのに、現実は「効率よくオムツを替えるマシーン」になっているような気がして。看護師・保健師の知識があるからこそ、『本当はもっとこうすべきなのに』という理想と、何もできない現実の間で板挟みになっていました。「現場の善意だけで回す仕組みには限界があります」という言葉を何度も口にしそうになりましたが、結局は言っても無駄だと諦めて、また次のナースコールに向かう。そんな日々の繰り返しでした。

ホンネ業:現場の過酷さと、専門職ゆえの深い葛藤。村岡さんの言葉からは、今の介護業界が抱える「歪み」が痛いほど伝わってきます。しかし、そんな彼女がここからどうやって「自分を救う手段」を見つけたのか。後半では、スマホ1台から始まった、彼女の静かな逆襲劇に迫ります。

笑顔で利用者と向き合う理想の介護(左)と、時間に追われ作業をこなす現実の介護(右)の間で悩む女性のイラスト

介護職でもう無理な私が副業で救われた話

ホンネ業:絶望の淵にいた村岡さんですが、そこからWebライティングという「外の世界」に踏み出します。夜勤明けの過酷なスケジュールの中で、どうやって時間を作り、最初の一歩を踏み出したのでしょうか。

夜勤明け14時のマック。ぼんやりした頭で開くクラウドワークスの画面

村岡さん:副業を始めた頃は、パソコンすら持っていませんでした。主にスマホやiPadを使い、夜勤明けで少し仮眠した後の14時頃、マックや自宅で作業を始めていました。本当は泥のように眠り続けたいんです。でも、ここで何もしなければ、一生この夜勤ループから抜け出せないという恐怖が勝っていました。朦朧とする意識の中でクラウドワークスランサーズを開き、必死に応募文を考えたり、noteに自分の思いを書き殴ったりしていました。あの時のマックのコーヒーの味と、画面の眩しさは今でも忘れられません。

面談で落ちた時の惨めさ。削ったのは「休息」ではなく「絶望する時間」

ホンネ業:始めたばかりの頃は、案件獲得にも苦労されたと伺いました。特に面談まで行って落ちた時は、精神的なダメージも大きかったのでは?

村岡さん:それはもう、かなり落ち込みました。オンライン面談なので移動費はかかりませんが、事前の準備や日程調整、そして何より「夜勤明けの貴重な体力」を使っていますから。不採用通知が来た時は『自分には何の価値もないのか』と惨めな気持ちになりました。でも、そこで気づいたんです。悩んでいる時間は、ただ絶望を深めるだけ。それなら、その時間を「次はどう改善するか」を考える時間に変えようと。副業のために削ったのは休息時間でしたが、同時に「ただ絶望して泣いている時間」を削っていたんだと思います。

ChatGPTは私の相棒。専門知識を「読者に届く言葉」に変える試行錯誤

ホンネ業:ライティングの過程で、ChatGPTも活用されているそうですね。具体的にどのように「相棒」として使いこなしているのでしょうか。

村岡さん:文章を丸投げするのではなく、自分の頭の中にある「ぐちゃぐちゃなメモ」を整理してもらうために使っています。例えば、介護現場での違和感を箇条書きにして、『これを一般の人にも伝わるような構成案にして』と相談するんです。自分の経験という「一次情報」に、AIの「客観的な視点」を掛け合わせることで、感情的になりすぎず、かつ専門性の高い記事が書けるようになりました。見出し案やタイトル案を何パターンも出してもらい、それを選び取る過程で、自分のライティングスキルも磨かれていった気がします。

女性ライターが、小さなロボット(AIアシスタント)と協力して、専門知識を分かりやすい記事にする様子を描いたイラスト

noteをポートフォリオに。記録(正確性)と感情のバランスに悩んだ末の決断

村岡さん:一番悩んだのは、どこまで「自分」を出すかでした。介護現場の記録は『客観的な事実』が全てですが、Webの記事、特にnoteは『何を感じたか』がなければ誰にも読まれません。職場の人が見たら……という恐怖もありましたが、最後は『同じように苦しんでいる誰か一人に届けばいい』と開き直って公開ボタンを押しました。すると、実績が少ない私に対してクライアントから『noteで努力の形跡が見えるから信頼できる』と言っていただけたんです。正確な記録ができる専門職の強みと、生身の感情。この両輪がポートフォリオになりました。

初めての報酬1,464円。十数万円の給料より「人生を救う」と感じた理由

ホンネ業:ついに手にした最初の報酬。クラウドワークスでの1,464円という数字を見た時、どのような感情が湧きましたか?

村岡さん:金額だけ見れば、介護職として1ヶ月働いて得る十数万円とは比べものにならないほど微々たるものです。でも、その1,464円(他と合わせて初月2,664円)の重みは全く別物でした。介護の給料は、自分の命を前借りして削りながら得るお金。でも副業の報酬は、自分の経験や言葉が価値として認められて生まれたお金。人生で初めて『介護みたいな肉体労働以外でも、私は稼げるんだ』という実感を得られたんです。この数千円が、私にとっては『いつでもこの場所から逃げられるんだぞ』という最強のお守りになりました。

「月5万円あれば夜勤を減らせる」という具体的シミュレーションがもたらす余裕

村岡さん:副業を始めてから、職場での理不尽な出来事への耐性が変わりました。以前は『ここで耐えるしかない』と絶望していましたが、今は『もし月5万円稼げるようになったら、夜勤を1〜2回減らしても生活できるな』と脳内でシミュレーションしています。さらにスキルを上げて、将来的にケアマネを取得して日勤中心になっても、副業があれば収入を補填できる。そう思えるだけで、上司の心ない言葉もどこか遠くの出来事のように聞き流せるようになりました。心の中に、自分だけの「出口」が見えた感覚です。

1年後の私。介護福祉士の勉強をしながら、カフェで記事を書く日常へ

ホンネ業:村岡さんが描く「1年後の未来」についても教えてください。今の努力は、どんな生活に繋がっていると信じていますか?

村岡さん:1年後も、私は介護の現場にいると思います。介護福祉士の試験も見据え、現場での専門性も高めていたいです。ただ、今のように夜勤に依存してボロボロになる働き方は卒業したい。理想は、定時で仕事を終えた後、カフェで1時間だけライティングに向き合う生活。休日には大好きな絵を描いたり、家族との時間を大切にしたり。今の文字単価1円という地道な一歩は、1年後の『自分の時間を自分でコントロールできる私』に繋がっていると確信しています。キーボードを叩く音は、私にとって未来へのカウントダウンなんです。

【まとめ】「介護職、もう無理」と泣いているあなたへ。まずはスマホに1行、今のしんどさを書き出して

ホンネ業:最後に、今まさに「もう無理だ」と画面の前で絶望している同業者の方へ、村岡さんからアドバイスをお願いします。

村岡さん:いきなり副業で稼ごう、なんて思わなくて大丈夫です。まずは、今あなたが感じている「しんどさ」を、スマホのメモ帳に1行だけでいいので書き出してみてください。誰にも見せなくていい。『夜勤明け、もう限界』『あの人のあの言葉が悔しかった』……。そうやって自分の感情を言葉にすることが、実はWebライティングの、そして自分自身を救うための第一歩なんです。私はその1行から、自分の人生を取り戻し始めました。あなたは独りじゃありません。まずは、自分を責めるのをやめて、その指を「自分のため」に動かしてみてください。