「残りの報酬、いつになったら払ってもらえるんだろう……」

「契約書も交わしていないし、これってもう泣き寝入りするしかないの?」

副業で案件を受けていて、そんな不安を抱えたまま、相手からの返事を待っていませんか。

私は会社員のまま、Shopifyの構築を副業にしてきました。その中で、報酬の残りが支払われないまま終わった案件があります。

契約書は交わしておらず、残りの20万円ほどは、結局取り戻していません。

この記事は「未払いを取り戻す方法」の記事ではありません。取り戻せなかった私が、どこで間違えて、その後どう変えたかを、綺麗事抜きで書きます。

フリーランスの報酬未払いに直面した頃 — 残り20万円ほどが止まった案件

「会社の決裁が降りない」と、分割払いを頼まれました

きっかけは、受注していた案件での一言でした。

「会社の決裁が降りないので、分割にしてほしい」

最初の分の支払いは確定していたので、私はそのまま受けてしまいました。

案件が終わっていないのに、ECの運用が始まってしまいました

最初の分が支払われた時点では、案件はまだ全体が完了していませんでした。

ところが、完了していない状態でもある程度は運用できる、ということで、ECの運用が始まってしまったんです。

私の中では「案件はまだ途中」。

クライアント様の中では「案件としてはある程度落ち着いた」。

この認識のギャップが生まれたまま、残りの支払いは止まってしまいました。

単発の依頼には、残りが払われる前提で応えていました

その後も、単発で依頼が来ていました。

私は、残りの分が支払われる前提で対応を進めていました。

でも、一向に支払いの見込みが立ちません。

改めて残金について確認すると、返ってきたのは「支払うべき認識はない。案件はまだ途中だった」という話でした。

認識が、まったく合っていなかったんです。

契約書はありませんでした。取り決めはビデオ通話の会話だけ

この案件では、書面の契約を交わしていませんでした。

しかも、契約の内容にあたる取り決めは、ビデオ通話での会話だけ。

証跡として何も残っていない、非常にまずい状況でした。

見積書とチャットのスクショを集めて、担当者の上司に送りました

残金について最初にしたのは、わずかに書面として残っているものを集めることでした。

具体的には、見積書と、必要な要件が書かれているチャットのスクショです。

それを提示して、事実関係を改めて示すチャットを送りました。

送り先は、やり取りしていた担当者ではなく、その上司です。エスカレーションした形でした。

上司は、未払いがあること自体を知りませんでした

返ってきたのは、話の噛み合っていない返信でした。

その上司は、支払い状況の実態を何も把握していなかったようです。未払いがあるという認識が、そもそもありませんでした。

「未払いなのは、案件が途中で終わっているからではないか」という勘違いも起きていました。

実際には、ECは運用されていて、未払いの分も含めて私が作業していた実態があります。

「これ以上は対応できません」と伝えて、関係を断ちました

これ以上交渉しても、時間の無駄になる。そう感じました。

上司は実態を把握しておらず、勘違いも重なっている。ここからさらに説明を重ねても、話が複雑になるだけです。

最後は「当初の見積もりの残りが未払いなので、これ以上の作業には対応できません」と伝えて、関係を断ちました。

第三者には相談しませんでした。残りの20万円ほどより、次の案件を選びました

外部に頼ることは、考えませんでした。

理由は2つです。

  • 第三者に相談するための、客観的な証跡が残っていなかった
  • このやり取りを続けて残りの20万円ほどを取り戻すより、すぐに切り替えて新しい案件に取り組んだほうが良いと考えた

契約書がない。取り決めは通話の中だけ。手元にあるのは見積書とチャットのスクショだけ。

この状態では、誰かに相談しようにも、出せる材料がありませんでした。

フリーランスの報酬未払いを防ぐために、私がその後変えたこと

書面の契約書を基本にして、支払い条件と時期まで書きました

この未払いのあと、私は基本的に書面の契約書を結ぶことにしました。

書面ですり合わせたのは、次のような項目です。

  • 受注金額
  • 納期
  • 支払い条件と時期
  • 損害賠償(受注金額を上限にする)

支払い条件と時期をはっきり書くようになったのは、まさにこの未払いがあったからです。

ただ、契約書を必須にしたきっかけは、この未払いだけではありません。契約書なしで受けた別の案件で、納期の認識がずれて訴訟の寸前まで行ったこともあります。その話は副業詐欺の見分け方の記事に書いています。

軽い改修でも、チャットの文面と通話の録音を証跡に残しました

契約書を結ぶほどの規模ではない、軽い改修や修正の作業もあります。

そういう案件でも、契約にあたるチャットの文面や、ビデオ通話の録音を残して、証跡にしていました。

未払いのとき、証跡が何も残っていない非常にまずい状況だったので、小さな案件でも残すようにしたんです。

打ち合わせの録音は失礼? 相手の反応は「特になし」でした

録音するときの同意は、ツールの表示とボタンで取っていました。

たとえばZoomでは、録音していると相手に表示が出て、同意のボタンを押す流れになっていました。私はその表示と、相手がボタンを押したことをもって、説明して同意を得たことにしていました。かなり機械的な運用です。

仕様としては、Zoomの公式ヘルプによると、録画が始まると参加者には必ず通知され、Zoomのアプリで参加している人には録画への同意を求める表示が出ます。参加者は「OK」で同意するか、ミーティングから退出するかを選びます。表示の細かい扱いは、アカウントの種類や管理者の設定で変わる場合があります。(参考:Zoom サポート|Modifying recording notification prompts)

相手の反応は、特にありませんでした。

むしろ相手のほうが、後から忘れないようにと、先に録画をしていることもあったくらいです。

支払いは「相手が満足するタイミング」の前に済ませてもらいました

もう一つ変えたのが、支払いのタイミングです。

相手が満足するタイミングの前に、必ず支払いを完了してもらうことにしました。

そのために、「納品」のはっきりした境界線を、自分で探しました。

新規構築の場合は、Shopifyの所有権譲渡の手続きを境界線にしました。所有権を譲渡すると、お客様はECとして自由に運用できるようになります。逆に譲渡しなければ、ストアに入ることはできても、運用を始めることはできません。お金を払わなければ成果物を使えない形にした、ということです。

仕様としては、Shopifyの公式ヘルプによると、パートナーがクライアント用に作ったストアは、クライアントに譲渡されるまで実際の取引ができず、テスト注文しか通りません。譲渡を受けたクライアントがプランを選んで、ストアのオーナーになります。(参考:Shopify ヘルプセンター|Client transfer stores and collaborations)

改修案件の場合は、ECの所有権はもうお客様にあります。そこで、改修済みのコードを運用中のテーマに反映しない、といった境界線で支払いを担保していました。

この境界線は、案件が正式に始まるタイミングで、はっきり伝えていました。契約書の中や、正式な面談、チャットの場です。

そして、その証跡が消えないように、録画やスクショで手元に控えていました。

契約前に管理画面へ招待されても、中には入りませんでした

契約を曖昧にしそうな相手として、私が怪しいと感じていたタイプがあります。

話し合いより先に、実作業を進めようとする人です。

まだ見積もりや契約の話の途中なのに、プロジェクトのグループチャットや、作業対象のECの管理画面に招待してきて、すでに作業を始められる状態にしてしまう。

これは、作業を始めているのかどうかの境界線を曖昧にします。一線を先に越えてくる相手は、怪しいと感じていました。

順番が前後したときの私の対応は、一つだけです。自分からは、その一線を越えないこと。

管理画面やチャットの招待が届いても、届いたままにして、中には入りません。契約がはっきりするまでは、作業を始められる状態にならない。これも機械的な対策です。

ちなみに、招待を放置していて、相手から急かされたことは案外ありませんでした。

振り返ると、お客様が忙しすぎて、話し合いから招待までを一回にまとめて済ませていたんだろうと思います。忙しいので、招待を受け入れたかどうかも、いちいち確認していなかったのでしょう。何もコメントされませんでした。

契約を意識しているお客様ほど、支払いもしっかりしていました

こうして契約と支払いの線引きをするようになって、分かったことがあります。

契約をしっかり意識しているお客様は、支払いもしっかりしてくれる傾向が高い。

逆に、あの未払いの案件のように契約を曖昧にして進める人ほど、支払いも曖昧にすることが多かったです。

報酬が未払いになったらどこに相談できる? 私は相談しませんでしたが、窓口はあります

私は第三者に相談しませんでした。相談するための客観的な証跡が残っていなかったことも、その理由の一つです。

制度としては、厚生労働省の委託事業として第二東京弁護士会が運営する「フリーランス・トラブル110番」があります。電話やメールで弁護士に無料で相談でき、和解あっせんの手続きも無料で使えます。(参考:フリーランス・トラブル110番)

また、2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法では、フリーランスに仕事を発注する事業者は、報酬の額や支払期日などの取引条件を、書面かメール・チャットなどで明示することになっています。従業員を雇っているなどの条件にあたる発注事業者は、成果物を受け取った日から原則60日以内に報酬を支払う必要があります。(参考:厚生労働省|フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ、公正取引委員会|フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A)

どちらにしても、手元に残っているものが多いほど、話は進めやすくなるはずです。私が困ったのは、まさにそこでした。

まとめ:フリーランスの報酬未払いは、起きてからより「起きる前」の線引きで防ぐ

契約書なしで受けた案件で、私は残りの20万円ほどを取り戻しませんでした。

振り返ると、つまずいたのはこの3つです。

  • 分割払いの依頼を、最初の分が確定しているからと受けた
  • 案件が終わっていないのに、運用が始まってしまった
  • 取り決めがビデオ通話の会話だけで、証跡が何も残っていなかった

その後に変えたのは、次のことです。

  • 書面の契約書を基本にして、支払い条件と時期まで書く
  • 軽い改修でも、チャットの文面や通話の録音を残す
  • 支払いは、相手が満足するタイミングの前に済ませてもらう(Shopifyなら所有権譲渡、改修ならテーマへの反映を境界線にする)
  • 契約がはっきりするまで、管理画面やチャットの招待には入らない

もし今、未払いに悩んでいるなら、まずは手元に残っている見積書やチャットを集めるところから始めてみてください。

そして次の案件からは、「お金を払わないと成果物を使えない」境界線を、案件が正式に始まる場で決めておいてください。起きてから取り戻すより、起きる前に線を引いておく。それが、20万円ほどを諦めた私がたどり着いた対策です。